Vol. 0 1

リサイクル原料を100%使用した
発泡ポリスチレン製ボード

  • Recycle

「エスレンウッドパネル RNW」PRCグレード
冊子版2022/05発行

COLLECTION 本号のテーマ:『エスレンウッドパネル RNW』PRCグレード

ボードの材料となるリサイクル原料ペレット

『エスレンウッドパネル RNW』は、リサイクル原料を使用した、発泡ポリスチレンシートの板状成形品です。主に量販店などでPOP 広告の芯材やフリップ用途、等身大パネルなど、サイン・ディスプレイ制作に幅広く使用されています。

近年の環境に配慮した製品を求める市場ニーズを踏まえ、『エスレンウッドパネル RNW』のグレードの一つとして、リサイクル原料を100%使用したPRCグレードを開発しました。

『エスレンウッドパネル』製品ページ

本製品はサステナブルスタープロダクトに認定されています。また「ReNew+」にカテゴライズされた製品です。
積水化成品グループの独自認定基準で、特に環境への貢献度が高い製品を「サステナブル・スタープロダクト」(環境貢献製品)として社内認定しています。「ReNew+」は、リサイクル原料を使用した当社製品群のカテゴリーブランドです。

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Behind The Scenes

開発裏話

製品化のきっかけはお客様の一言から

営業担当 山田昌弘

「積水化成品さんならリサイクル原料使用率100%の製品を目指すべきでしょう!面白くなりますよ!」お客様からそんなお声をかけていただいたことが、PRCグレード製品化に向けた第一歩でした。

当時私たちは、PRCグレードの前身となる製品で、リサイクル原料使用率55%のRCグレードの拡販に力を入れていました。そんなある時、営業先のお客様から「50%や60%では面白くないよ」「本当に世の中を変えていくなら、もっと上を目指して欲しい。」と厳しくもありがたいご意見をいただきました。

もちろん簡単な挑戦ではないことは分かりきっていました。原料は確保できるのか、品質は担保できるのかなど、考えるべきことは山のようにあります。

しかし、二の足を踏むだけでは仕事は進みません。営業先から戻るとすぐ開発担当のみなさんに「なんとしてもリサイクル原料使用率100%の製品を開発したい。みなさんの力を貸してほしい。」とお願いしました。

営業中の山田昌弘さん
Keywords「100%」「白」

50%や60%は当たり前。PRCグレードのリサイクル原料使用率は100%。さらに、リサイクル原料を使った製品とは思えない、美しい白。これがPRCグレードのアイデンティティです。

再生原料100%の難しさ

開発担当 細川哲

PRCグレード生産ライン

開発部門としても、RCグレードからさらにリサイクル原料使用率を高めた新しいグレードの研究開発を進めていました。

しかし、それは60%〜70%程度の話であって、100%となると話が変わってきます。まずはリサイクル原料が安定して大量に確保できる供給体制作りから始めなければなりません。

併せて、リサイクル原料の品質が安定しているかも重要です。生産原料を100%リサイクル原料に頼るということは、その品質が完成品パネルの品質に直結します。当然、色まじりの原料からは白く美しいパネルはでき上がりませんし、含有成分が安定しなければ仕上がり品質もバラバラになってしまいます。

苦心の末、色まじりが少なく含有成分も安定したリサイクル原料を安定して確保できる、新たな供給ラインを整えることができました。しかし、そのリサイクル原料は一点だけ問題を抱えていました。

パネルの品質をチェックする細川哲さん

デメリットの克服から期待以上の製品へ

製造担当 小西慶卓

積み上げられたPRCグレード

供給されるリサイクル原料には、僅かに軟質成分が含まれていました。通常、原料に軟質成分を混ぜると完成したパネルが柔らかくなってしまい、POPとして重要なハリ感がなくなってしまったり、保管時のたわみの原因となってしまいます。

また、抜き型などで裁断した際に角が潰れてしまい、外観を損ねてしまいます。ですから、軟質成分を含むリサイクル原料100%でパネルを製造するという話を伺った時は、これは大変な仕事になるぞと覚悟を決めました。

僅かに含まれる軟質成分のデメリットを制御するために、製造過程の様々なポイントを見直しました。改善点は機械の温度やガス圧、金型のクリアランス、各種調整剤の添加量など多岐におよびました。

意外に思われるかもしれませんが、パネルの製造作業はその日の気温や湿度が仕上がり品質に影響するほど繊細な仕事です。細やかな調整作業が一人前になるには何年もかかります。

経験豊富なベテランスタッフが集まって、何度も微調整を繰り返し、最適な製造方法を探るうちに、軟質成分のデメリットを解消できる製造方法を確立することができました。しかも、ハリがあり、たわみがないだけではなく、想定以上に良い品質となることがわかりました。通常よりも多くの軟質成分を混ぜることで、従来品を凌駕する、最高レベルの平滑性を付与することができたのです。

完成するまでは大変でしたが、これまで誰も実現できなかった、素晴らしい製品の実現に携われて満足しています。

今はまだ、既存サイズラインナップの一部でしかPRCグレードを製造していませんが、将来的にはラインナップの全てをPRCグレードに置き換えて製造できる体制を作りたいと考えています。

これからも、環境貢献製品であるPRCグレードの市場拡大を通して「持続可能社会の実現」に貢献して行きます。

製造ロット検査をする小西慶卓さん
  • Keywords「たわみ」「角」

    「たわみが少なく」「角がたっている」ことは良いパネルの条件の一つです。良いパネルか見分けるためには、積み上げてみれば一目瞭然。たわんだパネルは隙間ができて上手く積むことができず、角が立っていないパネルは角が丸く見えてしまいます。美しく積み上がったPRCグレードをご確認ください。

  • Keywords「平滑性」

    PRCグレード(写真左):最高レベルの平滑性。影のグラデーションが滑らか。
    従来品(写真右):一般的な平滑性。僅かな凹凸の影が見える。
    発泡ポリスチレン製ボードは発泡製品の特性上、表面にごく僅かな、歪みや凹凸が生じてしまいます。従来品においても、お客様にご納得いただける高い平滑性を実現してきました。しかし現状に甘んじることなく、研究開発を進めることでPRCグレードでは従来品を超える、最高レベルの平滑性を付与することが可能になりました。

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