ゴムのように弾み・ウレタンのように柔らかく
発泡スチロールのように軽い 環境貢献性の高い素材
- Reduce
- Replace
- Re-create
「ELASTIL」 & 「ELASTIL BIO」
冊子版2022/09発行

本号のテーマ:『ELASTIL』&『ELASTIL BIO』
『ELASTIL(エラスティル)』は弾性・反発性・柔軟性・復元性などに優れた発泡体で、非発泡のウレタンやEVA品に比べ、製品重量を50% 削減することが可能です。その様々な特性から、スポーツや介護分野など、様々な用途に活用できます。
『ELASTIL BIO(エラスティル バイオ)』は『ELASTIL』の特性をそのままに、植物由来素材を45%以上含んだグレードです。さらに『ELASTIL』と比較して、製品重量を30%削減することが可能です。石油由来素材の削減・軽量化を通して環境に貢献します。
【製品紹介】エラスティル:ELASTIL
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『ELASTIL』と『ELASTIL BIO』はサステナブルスタープロダクトに認定されています。また『ELASTIL BIO』は「BIOCellular」にカテゴライズされた製品です。
積水化成品グループの独自認定基準で、特に環境への貢献度が高い製品を「サステナブル・スタープロダクト」(環境貢献製品)として社内認定しています。「BIOCellular」は、生分解性または植物由来プラスチックスを活用した当社製品群のカテゴリーブランドです。 -
『ELASTIL BIO』は植物由来プラスチックスを45%以上使用しており、バイオマスマーク45を取得しています。
バイオマスマークは生物由来の資源(バイオマス)を活用し、品質及び安全性が関連する法規、基準、規格等に適合している環境商品の目印です。
積水化成品の技術ならもっと良いものが作れる
開発担当 高野雅之

2013年、とあるブランドから機能性ランニングシューズが発売されました。機能の秘密はミッドソールと呼ばれる靴底と中敷きのあいだにあるクッション部分。「エラストマー発泡体」と呼ばれる、ゴムのように弾む素材を使用していて、これまでにない走り心地が得られるとのフレコミでした。そして翌年、そのシューズを履いたマラソン選手が世界記録を樹立するなどして、瞬く間に知名度を上げていきました。
その頃、私は中堅社員の選抜メンバーを集めて、新製品企画・開発力を高める社内塾に参加していました。若手時代に素材としてエラストマーを検討したことがあり、当時話題となっていた件のシューズについても様々な調査を行いました。実際に触ってみると「積水化成品の技術ならもっと良いものができる!」と直感し、より高性能な「エラストマー発泡体」を開発することを社内塾で発表・提案。結果、高く評価され本開発に進めることができました。
そこからは昼夜を問わず、がむしゃらに研究開発に打ち込みました。既に市場に出ている素材より良いものを作らないと意味がありません。「より弾み・より柔らかく・より軽い」圧倒的な性能を持つ「エラストマー発泡体」を目指して試作品の山を築いていきました。限られた時間の中で他の開発チームの方にも手伝ってもらいながら、何度もテストを繰り返した結果、納得のいく性能を実現することができました。今になって思うと、仕事で少々の問題が起こっても動じない心を持つことができたのは、当時の経験があるからかも知れません。
こうして、積水化成品の熱可塑性エラストマービーズ発泡体『ELASTIL』が完成し、お客様へご提案できる体制が整いました。


Keywords「小さな粒」
『ELASTIL BIO』発泡粒(写真左)
ミッドソールの表面デザイン(写真右)
『ELASTIL』や『ELASTIL BIO』の発泡粒はとても小さく直径数mm程度。金型の隅々まで粒子を行き渡らせ成形することで、彫刻の様な、より繊細で複雑なデザインを表現することが可能となります。店頭でシューズを選ぶ際はぜひ、ミッドソールのデザインや使われている粒子径にも注目してみてください。新しい発見があるかも知れません。
セクションを超え一丸となったミッドソール開発
営業担当 瀬川健

『ELASTIL BIO』製ミッドソール初採用モデル「フォーエバー フロートライド グロウ」(写真右)
『ELASTIL』の弾性や柔軟性を活かせる分野として寝具・医療・介護・キッズホビー用品・自動車部材などなど、様々な業界へご提案する中で、素材開発当初より活用を想定していたシューズ業界のリーボック様が、「ELASTIL」の高い性能に興味を持っていただき、ミッドソールの共同開発が始まりました。
私たち積水化成品は発泡素材のプロですが、ミッドソールの開発は初めての試みです。予測はしていましたが、スタートアップ時はトライアンドエラーの連続でした。リーボック様が求められている、ミッドソールの形状や表面デザインはとても繊細で、技術的にも非常に難しいものばかりでした。また、シューズ業界はモデルの移り変わりが激しく、季節ごとに新製品が販売されるのが当たり前で、こうしたスピード感に合わせた開発が求められます。難しいオーダーにも最高の品質でお応えするため、サンプルを作ってはコメントをいただき修正。またサンプル作成。と何度も繰り返し改良を重ねる日々が続きました。
そしてついに2019年『ELASTIL』製ミッドソールが採用されたシューズの第一段、「フォーエバーフロートライド エナジー」と「ハーモニーロード 3.0」の2モデルが発売されました。これ以降、ノウハウの蓄積もあり、続々と採用が決定し、2022年9月時点で、国内外通算20モデル以上のシューズで採用いただいています。中でも2020年に発売された、環境に配慮した植物由来高機能ランニングシューズ、「フォーエバー フロートライド グロウ」は社会的にも大きな注目を集めました。このシューズを完成させるためにリーボック様より「石油由来の従来品と遜色のない、高性能な植物由来ミッドソールが欲しい」とご要望いただき、以前から開発を進めていた『ELASTIL』と同等の性能を発揮する『ELASTIL BIO』を提案したところ、製品化に十分な素材性能があると評価いただきました。しかし、『ELASTIL BIO』は成形時の温度や圧力など様々な加工条件が『ELASTIL』とは大きく異なります。『ELASTIL BIO』がミッドソールとして最高の性能が発揮できるようセクションを超え一丸となり、改めて開発に取り組んだ結果、採用に至りました。


Keywords「スピード」「省人化」
積水化成品はお客様の開発要望に迅速に対応するため、製造から検品・梱包までの一連のプロセスをオートメーション化した、最新鋭の省人化工場を有しています。
精密な調整
設計担当 木舩晋一

『ELASTIL』の中でも『ELASTIL BIO』の発泡成形は特に精密な調整と管理が求められる仕事です。成形条件のうち、加熱時間が1〜2秒ずれるだけで、成形不良となってしまいます。ミッドソールの金型設計では足のサイズ違いに合わせて、1モデルあたり20タイプ程度の金型を設計します。当然、金型ごとに最適な成形条件は異なり、さらに、その日の気温など環境要因も成形結果に影響を及ぼします。
最適な条件を発見するためには、根気強く成形機と向き合う必要があり、製造を安定させるまでは苦労の連続です。その分、シューズショップに並ぶ製品たちを見かけた時の感動はひとしおで、疲れが吹き飛ぶ思いでした。自分の仕事が環境貢献に繋がる製品を生み出していると思うと、とても感慨深いですね。

製造現場はチームワーク
製造担当 生井湧樹

長期間、成形機を動かし続けていると、どうしても細かい不具合が出てきます。メンテナンスを怠ると、僅かなボルトの緩みに始まり、蒸気ホースの破れやパーツのクラックなど、機械を止めなければならない大きなトラブルにつながります。生産効率の観点からも、日々のメンテナンスは欠かせません。
また量産時にもトラブルはつきもので、中でも『ELASTIL BIO』は私たちにとっても前例のない特殊な素材です。成形技術が安定するまでは何度か成形不良を出してしまいましたが、そんな時に頼りになるのが現場の先輩方です。一緒に方策を考えていただき、都度問題を解決してきました。積水化成品グループの製造現場は、こうしたチームワークで成り立っているんだと実感でき、失敗から良い経験ができたと思います。これからも『ELASTIL』や『ELASTIL BIO』を通して、シューズ業界をはじめ、幅広い業界に環境貢献性の高い発泡成形品を届けていきます。
