道路直下に雨水を一時的に貯めておく貯留浸透槽を構築
集中豪雨による道路の冠水被害を軽減
- Reduce
「アクアロード」
冊子版2023/05発行
本号のテーマ:『アクアロード』
『アクアロード』は道路直下に貯留浸透槽を構築し、雨水を一時的に貯めておくことができます。集中豪雨が起こった際に道路の冠水被害を軽減、河川の氾濫抑制に役立っています。
道路直下に構造部材として適用可能であることを証明する「建設技術審査証明」を取得しています。
従来のコンクリート製貯水槽と比較して原料の生産から施工完了までのCO₂ 排出量を57% 削減しています。
【製品紹介】アクアロード
Keywords「道路の下に雨水を貯める」
一時的に雨水を貯める貯留槽を道路直下に構築できる『アクアロード』。樹脂製でありながら車の荷重に耐えられる十分な強度を有しています。その実力は「建設技術審査証明」による折り紙付き。この類を見ないメリットは、貯留槽の設置場所が限られていたり、土地を有効活用したい都市部に適しています。
道路直下への挑戦
営業担当 坪井宏人
「車両の通行に耐えられれば、樹脂製でも道路直下に貯留槽が作れるんじゃないか」 そんな思いつきから、『アクアロード』の開発はスタートしました。
元々は発泡スチロールを使った盛土の資材ラインナップを増やすために、他社の樹脂製貯留槽の取り扱いを考えていた時でした。貯留槽とは雨水を一時的に貯めておき、冠水被害を防ぐものです。 以前は雨が降ると雨水は地中に浸み込んでいきましたが、近代化に伴い地面はアスファルトに覆われ、雨水がスムーズに浸み込みません。また2000年代以降増加を続ける降水量の影響もあり、排水が追いつかず道路が冠水しやすくなりました。さらに交差する道路や線路の地下をくぐり抜ける構造の道路(アンダーパス)のような、水が溜まりやすい道路構造も冠水被害が増えている原因となっています。その道路の冠水被害を解決したい!という強い思いをずっと抱えていました。 2000 年頃の道路直下に作る貯留槽といえば、砕石やコンクリート製の管・槽などが主流でしたが、雨水をたくさん貯めるには広い敷地を確保しなければならないという問題を抱えていました。一方、樹脂製貯留槽は狭い敷地でも施工可能で、たくさんの水を貯めることができます。しかし耐荷重が小さく、道路直下へは構築できませんでした。そこで今までにない「道路直下へ構築できる樹脂製貯留槽」開発への挑戦がはじまりました。
課題となったのは強度です。道路直下へ施工するには、車両の通行による大きい荷重に耐えられなければなりません。他社の樹脂製貯留槽の形状を参考に、水を貯めるために必要な空間を確保しつつ補強を入れていきました。成形会社と協力し、何度も試作と検証を重ねていき、その末に必要な強度と貯水空間を両立した新しい製品を完成することができました。製品は完成しましたが「道路直下へ構築できる樹脂製貯留槽」はこれまでに前例がない製品です。製品に自信はありましたが、実績がありません。安全に、そして安心して採用してもらうためには、その性能を証明する必要があると考えました。そのため、次のステップとして「建設技術審査証明」の取得を目標とし、2008年から申請の準備に着手しました。「建設技術審査証明」とは、新しい建設技術の活用を促進するため、適切な技術かどうかを客観的に審査・認定するものです。 審査証明取得のためには、繰り返し圧縮される力に耐えられるかどうか、様々な方向からかかる力に耐えられるかどうか、といった多種多様なデータを提出しなければなりませんでした。しかし、そういったデータを採るための実験設備が世の中に存在しなかったのです。そのため、試験装置を自分達の手で一から製作する必要がありました。幸い、発泡スチロール製シートの設備を設計した経験があり、その構造を応用することで装置を作ることができました。並行して『アクアロード』を客観的に評価してもらう研究者を探しました。しかし当時、道路直下に樹脂製の資材を使うことに抵抗感を感じる人も多く、協力者探しは難航しましたが、やっとのことで見つけ出しました。苦労の甲斐あって2011年、ようやく「建設技術審査証明」を取得。道路直下に施工できる強みを明確にアピールするため『アクアロード』と名付けました。
2000年に起こった東海豪雨以降、度重なる水害があったことで貯留槽の重要性が認識されつつあり、「建設技術審査証明」の取得も相まって、兵庫県川西市の私道を皮切りに公道にも徐々に採用されていきました。道路直下に構成できる樹脂製貯留槽という、まったく新しい市場を開拓したのです。
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Keywords「隙間が大切」
「隙間が空いている」と言われると通常イメージは悪いですが、『アクアロード』は違います。地面に埋めた時、その隙間に雨水が入り込んで貯まっていきます。体積のうち、隙間部分が占める割合は、なんと92%以上!その大きな隙間があることで、たくさんの雨水を貯めておくことができるのです。
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Keywords「人の手で運べる」
従来の貯留層はクレーンなどの重機を使って設置しなければなりませんでした。それに比べて『アクアロード』は軽量なので、人の手でも運べます。設置の時も人力で積み上げていくことができます。工期も断然短く、抜群の施工性なのです。さらにスタッキングできるので、コンパクトにして輸送できます。
現場を選ばない柔軟さ
設計担当 山下剛志
『アクアロード』は様々な施工現場へ柔軟に対応できる点も特長の1つです。組み合わせ方によって槽の大きさ・形状は自由自在。様々な敷地に対応できます。さらに人の手で運べるという圧倒的な軽量さにより、施工時間が短縮。重機が入れない現場にも運び込めるという点が従来方式の貯留槽との大きな違いです。 都市部で住宅を整備する場合、雨水を貯めておくスペースが限られるため、道路下に貯水槽を作るケースが多くなっています。『アクアロード』は雨水を貯留する性能だけでなく、施工性の良さも評価され、選ばれています。「道路下は『アクアロード』でしょ!」と言われ、相談されることもあります。
『アクアロード』の様々な長所と、積水化成品が道路施工で培ってきた知見や実績を合わせることで、他社には真似できない強力な提案を可能にしています。
広がる活躍フィールド
営業担当 川口正幸
設計業者の中には、未だに「道路直下に樹脂製の資材なんて」と考えている人も少なくありません。今後もPRの余地があると感じています。そして、さらに踏み込んだ提案をしていく必要性も感じています。例えば河川の設計基準は自治体ごとに決まっています。それらの設計基準を把握し、他社も含めた貯留槽に関わる知識を持つことで、コンサルタントや設計者に頼られるような体制や仕組みを作りたいと思っています。また、道路直下に使用できる「建設技術審査証明」を受けた樹脂製貯留槽は積水化成品だけが提供しているので、冠水被害の抑制に貢献を続けていくためにも頑張っていかなければ!というプレッシャーもあります。日々提案を続ける中、最近では道路直下だけでなく、駐車場・消防活動空地・倉庫といった車両が通過・停車する敷地にも採用されるようになりました。
また近年の降水量増加により、主流であった地下への雨水貯留だけでは容量が足りなくなってきています。 そのためビルの屋上などに貯留構造を備え、建物自体で雨水を貯留しておくことも増えてきています。『アクアロード』は人の手で運んで構築できるほど軽量です。建物への負荷が低いという利点から建物内に貯留構造を作るにはうってつけということもあり、ビルの再開発という分野にも使われ始めています。
他方、水害対策として語られる『アクアロード』ですが、「建物への緑化」にも一役買っています。景観の向上、ヒートアイランド現象の抑制のため、建物の屋上などに人工的な緑地を構築することが増えており、『アクアロード』を緑地の下に設けることで、大雨が降った時に雨水をスムーズに逃がします。それにより緑地が水浸しになることなく、保護します。
道路の冠水被害の抑制として開発した 『アクアロード』ですが、今後も活躍の場を広げ、社会・環境へ貢献していきます。
Keywords「ビルの再開発」
ビルの再開発に合わせて、景観の整備やヒートアイランド現象の抑制として建物の屋上などに緑地が取り入れられています。『アクアロード』は軽いので屋上へ運びやすく、建物へ負担を抑えて設置ができ、緑地が水浸しにならないように役立っています。
上部は低木などが植えられ、憩いの場となっている(写真左)
下部はバスターミナルとして、空間が広がっている(写真右)