積水化成品グループは、2022年5月に「気候関連財務情報開示タスクフォース」(以下、TCFD)の提言に賛同しました。「気候変動対応」をマテリアリティ(経営重要課題)に特定し、生産の省エネルギー化や効率化、再生エネルギー活用などによるCO2 排出量削減や、脱炭素化に貢献するサステナブル・スタープロダクト(環境貢献製品)の創出と拡大など、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みを加速させています。また、中期経営計画「Spiral-up 2024」の重点課題のひとつに「環境・社会課題解決型事業への転換」を定め、その推進項目に「循環型ビジネスによる環境貢献製品の拡大」と「カーボンニュートラル実現への挑戦」を据えています。
今後、TCFD 提言に沿った気候変動対応に関する情報開示に取り組み、事業活動を通じて持続可能社会の実現に貢献するとともに、当社グループの持続的企業価値向上に向けた経営基盤強化を進めていきます。

TCFD
  • *TCFD:2015 年に金融システムの安定化を図る国際的組織である金融安定理事会(FSB)により設立されたタスクフォースで、企業の気候変動に関するリスクと機会に関する情報開示を推奨しています。

ガバナンス

積水化成品グループでは、気候変動の課題について、常務会とその下部委員会であるサステナビリティ委員会、コンプライアンス・リスク管理委員会において議論の上、取締役会において審議・承認・監督するガバナンス・リスク管理体制をとっています。
サステナビリティ委員会においては、課題認識とそれを踏まえた施策について、コンプライアンス・リスク管理委員会においては、各リスクの評価と対処のための取り組みについて、それぞれ環境委員会が起案した内容を審議し、常務会・取締役会に付議することとしています。環境委員会は取締役会で承認された方針や施策の実行を牽引します。

【気候変動の課題解決に関する体系図】


気候変動のリスクと機会を評価、管理する上での経営者の役割

積水化成品グループは、中期経営計画「Spiral-up 2024」において、「持続可能社会への貢献」と「持続的な企業価値向上」の実現を目指すべき方向性として定め、サーキュラーエコノミーを軸に据えた事業構造の転換や、2050年カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを進めています。
それを踏まえて経営者は、気候変動に関する取り組みの状況が、当社グループの定めた目指す方向性に合致しているかの視点に基づき、リスクと機会を十分精査し、状況に応じた経営判断によって事業を推進する責任を担っています。

気候関連のリスク・機会、戦略

積水化成品グループは、主要事業である発泡プラスチック分野をシナリオ分析実施対象事業に選定し、気候関連のリスクの特定とその機会および対応策の検討を行い、TCFDのフレームワークに則り低炭素経済の実現に向けた「移行リスク」および気候変動に伴う「物理リスク」の分析を進めました。
次のステップとしては、現内容のブラッシュアップとともに、産業革命以前比で世界の平均気温上昇が1.5℃に抑制されるシナリオおよび成り行きで温暖化が進行する4℃上昇シナリオ、具体的には国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が提示するパラメーターなどに基づき、事業インパクトと財務影響度の評価を進めます。

区分 内容
移行
リスク
政策/規制リスク GHG排出に関する規制の強化、情報開示義務の拡大など
技術リスク 既存製品の低炭素技術導入によるコスト増、新規技術への投資失敗など
市場リスク 消費者行動の変化、市場シグナルの不透明化、原材料コストの上昇など
評判リスク 消費者選好の変化、業種への非難、ステークホルダーからの懸念増加など
物理的
リスク
急性リスク サイクロン・洪水のような異常気象の増加・甚大化など
慢性リスク 降雨や気象パターンの変化、平均気温の上昇、海面上昇など

※気候関連財務情報開示タスクフォース 参考

気候関連のリスクと機会、積水化成品グループの対応

タイプ 財務影響が想定
される重要項目
想定されるリスクと機会 積水化成品グループの対応
リスク 機会
政策規制 GHG排出に関する規制強化 ・炭素税導入によるコストの増加
・CO2排出量の規制強化
・CO2排出削減に貢献する環境貢献製品による事業領域拡大
・GHG排出削減を機会とした顧客との協働拡大
・再生可能エネルギー設備の計画的な導入
・生産プロセス革新による生産時のエネルギー効率向上
・環境貢献事業・製品に重点を置いた事業強化
各種材料の環境規制 ・代替材料への置き換えなどに伴う既存事業の縮小
・代替材料の調達難やコストの増加
・リサイクルや廃棄物規制の強化
・環境貢献製品の優先的使用による需要増
・バイオマス・再生原料などを活用した新たな製品開発による環境価値向上
・規制材料代替品の早期提供による先行利益獲得
・SKG-5R※1を軸にした環境貢献製品ラインアップを強化
・リサイクル、バイオマス・生分解性プラスチック材料比率を2030年までに50%以上とする目標を設定
・規制情報の早期情報収集と代替材料の開発
技術 低炭素、再エネ・省エネ技術の普及 ・低炭素、省エネ、再エネ設備対応に対する費用増
・新技術導入遅れによるネガティブなイメージ
・顧客の低炭素、省エネ性能につながる製商品の事業機会拡大による新規事業の獲得
・新たな技術開発に貢献する新規市場の獲得
・環境投資枠の活用による積極的な再エネ・省エネ設備導入
・生産プロセス革新と省エネルギー推進で総投資費用圧縮
・当社基盤技術を生かした新たな環境貢献の追求
市場 市場の不確実性 ・原油価格変動による原燃料調達コストの変動
・再エネ比率などによる電力価格の変動
・発泡化による省資源製品の採用機会拡大
・原燃料使用量削減につながる製品の利用拡大
・高付加価値事業への転換と生産性向上
・省エネ視点での環境貢献製品の提案強化
顧客、消費者行動の変化 ・顧客ニーズの変化に対する対応の遅れ
・ワンウェイ製品の需要減
・環境貢献製品の需要の高まり
・環境貢献度の見える化で優先販売機会増
・リターナブル製品の需要増
・水平リサイクルによる環境価値の向上
・マーケティングツール活用による顧客ニーズの収集と共有化
・SKG-5R※1を軸にした循環型ビジネスモデルの構築
・環境・社会課題解決型事業への転換
・再生原料の調達と品質の安定性確保
評判 顧客・消費者からの評判変化 ・温暖化対策の対応遅れによる企業ブランドの低下
・情報開示不足による外部評価の低下
・環境対応や気候関連情報開示促進による企業イメージの向上
・環境対応の推進で資金調達が有利になる
・SKG-5R※1の推進
・タイムリーな情報開示と開示情報の充実
急性 異常気象の増加 ・サプライチェーンの寸断
・自社工場稼働停止など被害増加と販売機会損失
・サプライチェーン強靭化による顧客信頼度向上
・災害対応関連商品の需要の高まり
(未然防止、早期復旧資材、強靭化など)
・地域別リスクの洗い出しとそれに基づくBCP取り組み強化
・DX活用によるSCM機能の強化
・豪雨による冠水や土砂崩れを防ぐ製品、応急や早期復旧につながる製品の拡販と展開
慢性 降水、気象 パターンの変化 ・生産拠点の防災対策コストの増加
平均気温の上昇 ・電力供給制限による生産供給への影響
・農水産物の収穫量減少、地域性の変化
・需要地域・消費地域の変化
・高断熱材、省エネ性能につながる製商品の事業機会拡大
・多拠点を生かした需要変化への柔軟な対応
・生産革新による消費電力削減、生産性向上
・エネルギー効率向上につながる断熱製品の展開強化
・需要変化に応じた拠点別の中長期戦略策定

※1 SKG-5R:循環型社会に向けた3R(Reduce、Reuse、Recycle)と積水化成品グループの独自技術による2R(Replace、Re-create)からなる持続可能な社会への貢献に向けた当社グループの活動です。

リスク管理

積水化成品グループでは、気候変動による当社グループの事業への影響について、シナリオ分析を実施して把握しています。分析によって洗い出された課題は、環境管理や保全などに関する戦略を立案する環境委員会での審議・評価を経て、対処すべき具体的なリスクとして識別されます。リスク低減の取り組みは、環境委員会で審議されるとともに、環境委員会から常務会の下部委員会であるコンプライアンス・リスク管理委員会に報告され、経営上のリスクのひとつとして管理、審議されます。その結果は常務会に報告後、取締役会にも報告されています。

指標と目標

積水化成品グループは、2030年までに達成する2つの目標「サステナブル・スタープロダクト(環境貢献製品)の創出と市場拡大」「CO2排出量削減」を設定しました。

目標

目標Ⅰ サステナブル・スタープロダクト(環境貢献製品)の創出と市場拡大
2030年度目標 登録(累計)100件 売上高比率 50%
目標Ⅱ CO₂排出量削減
2030年度目標 Scope1+2 △27%
2050年度目標 カーボンニュートラル実現

実積1:サステナブル・スタープロダクト(環境貢献製品)の創出と市場拡大

サステナブル・スタープロダクト売上高比率 サステナブル・スタープロダクト売上高比率
サステナブル・スタープロダクト登録件数 サステナブル・スタープロダクト登録件数

実績2:CO2排出量削減

CO2排出量 CO2排出量